Crystaline [クリスタライン]

スチームパンクファッションを普段着にしているWebデザイナー、Crystalineの日記。スチームパンクな自作アクセサリーやファッションについて発信しています。作り方やスチームパンクについての基礎知識も。

スチームパンクとレトロフューチャーについて

スチームパンクの世界観については「スチームパンクファッションについて」で詳しく解説していますが、最近スチームパンクレトロフューチャーだという風に同列で紹介されている記事が多く、それに対するご質問も寄せられています。ここではそれについて詳しくご説明したいと思います。
結論から言いますとレトロフューチャーというのはスチームパンクとはまた別のSFジャンルです

時代背景と用いられる技術について

日本語で端的に言ってしまうと「スチームパンクは『明治SF』」であり、「レトロフューチャーは『昭和SF』」のことを指します。その違いを描かれる技術や風俗の違いから見て行きましょう。

スチームパンクな教室とレトロフューチャーな教室
イラストで見るスチームパンクな教室(上)とレトロフューチャーな教室(下)
スチームパンクは19世紀から20世紀初頭にかけての時代を背景としたSFやファンタジーの事を指します。そのため木製の部品や真鍮や銅などの大きな歯車やカム、タイプライター様のキーボードや裸電球などがその内容に用いられている描写があります。高度な科学技術は不思議な力として描かれ、時に魔術的なものや霊的なものも描かれます。
スチームパンク
イラストで見るスチームパンク
一方レトロフューチャー第二次世界大戦後に描かれた"当時の"近未来SFを指すことが多く、映像作品で言えば「スタートレック」や「スターウォーズ」、1967年に制作された「007 カジノロワイヤル」がそれにあたると思われます。
前述したように第二次世界大戦後に作られたSFということから、素材にはプラスチックやアルミ、ステンレス、発光ダイオードやモノクロ液晶ディスプレイ、現代風のキーボード(高さのあるメンブレン式のキーボード)が使用されている描写があります。
レトロフューチャー
イラストで見るレトロフューチャー
このように技術や時代背景も異なる両者なので「同一のもの」という解釈は、上記の知識からも非常に理解に苦しむところです。
※一部近未来的なスチームパンクレトロフューチャーに属する事はありますが「レトロフューチャー=スチームパンク」ではない、という事をここでは述べています。スチームパンクの中にもレトロフューチャー的な要素は含まれる事があります。

私の考える「レトロフューチャー」という語が広まった理由

レトロフューチャー」というのは日本語の感覚で「懐古的な未来」という風になるからか、今では広く「スチームパンク」の類義語として捉えられている印象を受けます。
これには私は一つ理由があると思っていて(度々Twitterなどでは申し上げていますが)英語圏の方々にとっての「Steampunk」という語は「Steam」自体が日本語のように単に「蒸気」という意味を持つだけでなく、「蒸気機関」や「蒸気機関を使った」という風に受け取ることが出来、それだけでヴィクトリアンな古いものを思い浮かべるそうです。ところが日本人にとっては「スチーム=蒸気」のイメージが強く、未だに「スチームパンク蒸気機関至上主義」といったような誤解も多くあります。
その点「レトロ」は日本では広く市民権を得ている外来語であり、定義の枠を超えて明治時代のものまでも「レトロ」と称される事が多いようです。(「レトロ」は主に今よりもデザインが古い、時代の近いものに対して使われる言葉であり、50年前までのものは「ヴィンテージ」、100年以上前のものは「アンティーク」と呼ばれる事が多いように思われます。)
そのため「スチームパンク」という言葉に馴染みの薄い我々日本人にとって「レトロフューチャー」という語が最も「スチームパンク」という世界観に当てはまる言葉だったからではないか、というのが私の個人的な感想です。